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ナツからハルへの問いかけ

  • 執筆者の写真: tilltillteabrunch
    tilltillteabrunch
  • 6月14日
  • 読了時間: 3分

 こんな事を話したら変な人だと思われる。そう感じて話さない事っていっぱいあるよね。皆あると思う。だけどそれを話すこと自体がおかしいって思われて、思う。だったら話さない方がいいに決まっているんだ。


 「また何か考えているでしょう?」


 隣の席にいる彼女にはお見通しだ。名前は晴海。ハルってアタシは呼んでいる。アタシは奈津花だからハルにはナツって呼ばれる。ハルナツ、いつかアキとフユも見つけようっていつも言っている。クラスにはアタシ達と同じく縮めてアキちゃんやフユちゃんもいたけれど、仲良くなれなかった。


 「もう。ハルにはお見通しかあ、やられた」

 「ナツはわかりやすいもの」


 どっちかというとアタシは勉強が好きじゃない。それでもこの進学校にいるのがアタシ自身不思議だ、と常々感心している。だって、ハルがここに進みたいってずっと言っていたから。ハルと同じ高校、同じ制服、同じクラス、そんな楽しみがある。だからアタシは勉強を頑張って頑張り倒した。そして晴れてこの春からハルと同じ高校に入学できたのだ。勉強は相変わらず好きにはなれないけれど、優しいハルが助けてくれる。やっぱりここを選んで大正解なんだ。


 「それで、今は何を見ていたの?」


 アタシ、勉強は苦手。難しい数式なんて吐き気がするみたい、なんてね。でも、考え事は好き。どうでもいいことについて考えを巡らせるのがアタシの一番好きなこと。


 「あのね、アタシ達の話す事ってどこから来るんだろうって考えてた」


 こんな事を話すと大抵の人は嫌がる。意味無いとか、つまんない、気持ち悪いなどなど。ハルは違う、いつも楽しく聞いてくれた。ハルは真っ黒な瞳で宙を見つめてからこう言った。


 「そうだなあ、よく言葉の引き出し、とか語彙力、とか言われているよね?」

 「うん、確かに。でもアタシが思うのはもうちょい違う感じ」

 「辞書型とか。こう頭の中で自然に引いていたりとか」


 ハルは辞典をパラパラ、捲る動作をした。


 「それあるかも。ハル、さらにつきつめてみて?」


 考えるのが好きなんて、実際はハルに考えてもらっているの。ハルとこんな時間を過ごすことができる、だからアタシは考える事が好き。もちろんアタシに付き合ってくれるハルはもっと好き。


 「ナツはどう? どんなイメージが浮かんだ?」

 「ハル、難しい。伝えたいのに言葉が浮かばないよ」

 「ナツそれだよ。今何が見えているの、どうやって考えているか教えて?」


 ハルのようにはできない。ハルの言葉はいつも的確でそれでいてあっさり、でもとっても優しいんだ。だからアタシはまた一生懸命に頑張り、伝えている。


 「言葉が流れていくのかな。でも頭の中で言語にできないの。何か言葉になる前のものが川みたいに」

 「うん、ナツそれで、それから?」

 「流れる言葉がアタシにも流れて、それを今ハルに伝えている、のかなあ? ああ、まだまだ言い足りない事とか流れがある。ハルはこれをどう思う?」


 ハルは目を輝かせた。


 「じゃあ、ナツの元に来なかった流れはどうなるか、知りたいな?」


 アタシは更に頭を捻る、捻る。


 「なんかそのまま消えて行くような。あっ、これってもったいなくない?」

 「ナツったら。頭の中の言葉、全部話したら疲れちゃうよ。それに言葉を考えるばかりで動けなくなるよ、きっと」


 ハルが笑うからアタシは笑う。アタシは毎回こう話を締めくくる。


 「そっかあ、やっぱり難しいや」


 敢えてはっきり答えは出さないの。またハルと楽しく話したいから有耶無耶にして誤魔化して。アタシはこんな毎日、大好きなんだ。答えのない問題をアタシ達にかけて、そうしてわからないふりをする。それは進路とか将来とか、そんなわけがわからない事に蓋をしてくれるから。いつか来るかもしれない別れを薄らげてくれるから。だから、今日もアタシ達は答えのない考えを巡らせて過ごすわけ。楽しい日々に言葉をつけて、そう川に流して流れて行くの。

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